カナダのエネルギー株である「エンブリッジ(NYSE:ENB、TSX:ENB)」も出資しているアメリカの「ダコタ・アクセス・パイプライン(冒頭画像)」は、2020年7月に「さらなる環境への影響を評価する必要がある」との理由で連邦裁判所から運用停止を命じられました。
このパイプラインは2019年に25億ドルの債券を発行しています。仮に運用停止となった場合には、パイプラインに出資した、エンブリッジを含むいくつかの事業者が債務を保証することになっており、エンブリッジも巨額の支払いを課せられる可能性があります。
米ダコタ・パイプライン停止命令、大口出資者が数億ドル支払いも | Reuters
ちなみに、現在のところ、エンブリッジの株価への影響は見られません。
事の経緯
ダコタ・アクセス・パイプラインは米ノースダコタ州でシェールオイルを採掘できるバッケンエリア(Bakken)に端を発しています。
出典:Bakken Infrastructure | Enbridge
このパイプラインは「ダコタ・アクセスLLC」によって計画され、このLLCにいくつかの企業が出資しています。
★ダコタ・アクセスLLCへの出資者
- エナジー・トランスファー(38%)(ET.N)
- フィリップス66(25%)(PSX)
- エンブリッジ(28%)(ENB)
- マラソン・ペトロリアム(9%)(MPC)
しかし、このパイプラインは2016年の建設承認当初から、ネイティブアメリカンであるスー族を中心に、反対運動が行われていました。
★ダコタ・アクセス・パイプライン反対への理由
- 飲料水・農業用水汚染の懸念
- 先住民族の歴史的な埋葬地を破壊する恐れ
反対運動はSNSから始まり、前大統領のオバマ氏や次期大統領候補の1人だったサンダース氏など、民主党系の大物も支持を表明するなどに至っていました。
民主党は「パイプライン事業 < 環境保護」を選ぶようですね。。
ちなみに、エナジー・トランスファーの偉い人はトランプ大統領の友人でもあり、このプロジェクトはトランプ政権のお墨付きでもありました。
パイプライン事業も安泰ではない
パイプラインを利用した燃料輸送事業は、巨額の設備投資と公的機関の認可が必要で、参入障壁の大きなビジネスです。
しかし、特に環境問題から、環境保護団体と先住民族の反対意識も根強く、安定した事業とは言い難いというのが感じるところです。
例えば、エンブリッジの保有する5号パイプライン(LINE 5 Pipeline)は、環境保護を理由にミシガン州の政治家から廃止を強制する訴訟が行われています。
個人的には、パイプラインは一度稼働し始めると契約が長期にわたることから、安定的な収入を得たい投資家にとってはうまみのある業態だと思ってました。

しかし、政治的リスクが大きい業態だとも学んだところです。
現在のところ、エンブリッジはダコタ・アクセス・パイプラインの件について「影響は過少である」と述べています。
Enbridge said the financial impact of the Dakota Access shutdown would be minimal because of the size of its investment and ability to reroute crude.
出典:UPDATE 1-Dakota pipeline investors could face major hit after adverse ruling | Reuters
ただし、同記事中では債券の支払いのために、エンブリッジは財務支援を必要とする可能性があるとも述べられています。
ちなみに、エナジー・トランスファーは「控訴する」と述べています。
行方については今後も追っていきたいところです。