2020年7月時点で保有しているカナダ株に「エンブリッジ(Enbridge)(ティッカー:ENB)」があります。
エンブリッジはコロナ以前から配当利回りが6%を越えており、びっくりするほどの高配当銘柄です。配当は3の倍数月に分配され、その2週間ほど前が権利確定日です。
https://investor-life.info/2020/03/10/enbridge_dividend_mar_2020/
カナダ旅行に行くためには高配当銘柄をポートフォリオに組み込まねばなりませんね!というわけで、いろいろとエンブリッジのことを調べてみました。
銘柄解説
エンブリッジ(Enbridge)はカナダ・アルバータ州に拠点を置く石油・天然ガスの輸送を行なう企業です。主にカナダのアルバータ州で採掘されたオイルサンドから精製された合成原油や、同州のディープベースンと呼ばれる地域で採取される天然ガスを、アメリカの精製事業者のもとに輸送します。
出典:https://www.nikkoam.com/files/lists/news/20140404_01.pdf(pdf)
ミッドストリームでの事業は資源価格の影響を受けにくいのが特徴です。エンブリッジの場合もパイプライン使用は長期契約を行っており、パイプラインが利用されているうちは使用料を受け取れる見込みです。
業績と財務
出典:Atom Finance
2014年から2019年までの、エンブリッジの売上高と利益の推移は上記の通りです。売上高(Total Revenue / 紫)は増えており、利益(Gross Profit / 緑)も順調に伸びています。
エンブリッジの事業は景気や原油価格の影響を受けにくいのが特徴です。以下はエンブリッジの調整EBITDAと、米国の原油価格(WTI, Western Texas Intermediate)、カナダの原油価格(WCS, Western Canadian Select)の比較で、2008年の金融危機や、2015年の原油価格低下などがあった中で、原油価格は低迷し続けたにもかかわらず、エンブリッジの調整EBITDAは伸び続けました。
セクター別売り上げ
エンブリッジの資料によると、2019年時点でのセクター別売り上げは合成原油の輸送が53%、天然ガスの輸送と貯蔵が42%となっています。また、北米とヨーロッパの英仏海峡上に設置された風力・太陽光発電施設を利用した発電事業からの売り上げも数%ほど含まれます。
2020年Q1までの四半期決算
以下は2020年Q1までの四半期ごとのエンブリッジの業績です。
出典:gurufocus
巨額の設備投資が必要なため、負債が多くなっています。カナダのエネルギー事業者とDEレシオを比較すると、エンブリッジの負債はやや多い部類です(同業他社のTCエナジーよりは少なめ)。
2020年Q1の決算では、前年同期に比べてパイプライン輸送の需要が減ったことと、利息支払いのため、純損失を計上しました。ここ数年、エンブリッジのパイプラインは過密状態が続いていたものの、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて上流銘柄のオイルサンド採掘が減ったのが原因です。
配当について
エンブリッジは、2020年に向かって毎年10%の配当の成長を謳う増配企業です。
同社は営業収益の60~70%程度を配当金に充て、残りの収益を経営のための費用に使っています。そのため、タコ配ではありません。
以下は、希薄化後1株利益(Diluted Normalized EPS / 紫)と1株配当(DPS / 緑)ですが、1株当たりの利益以上に配当金を出していることが分かります。特に2015年は1株利益が赤字であるにも関わらず、前年からの増配を継続しています。
出典:Atom Finance
1株利益が1株配当よりも小さくなった理由には、減価償却費などの経費がのせられているためです。
ちなみに新型コロナウイルスのため、2020年第一四半期の1株当たり利益(EPS)は-0.71カナダドル(調整後EPSは+0.83カナダドル)となりました。このような逆風下でも、同社高い配当を維持しています。
長く続けた挑戦なのでやめられないのも1つの理由っぽいです。
将来性と投資リスク
エンブリッジの事業は上流の石油採掘事業者の活動に影響を受けています。カナダの上流事業の多くは環境負荷の高いオイルサンドを採掘しており、環境保護団体や米民主党からの強い反対圧力があります。
しばしば裁判などを理由にパイプラインの利用差し止め・敷設中止などの政治的判断が下される場合があります。配当利回りの高さだけでなく、政治・環境保護団体との関係にも注目したほうがよい銘柄です。
もし、アメリカに民主党政権が誕生した場合には、新たなパイプラインの敷設は難しくなるはずです。